中村: 高専時代、寮生活・部活・研究室の三つのコミュニティーで今の自分に繋がる体験を得ました。
まず寮生活なんですが、私の入っていた寮はとても厳しい寮で、先輩である役員の監視があり、何か不手際があると怒鳴られ、時には手を上げられるような環境だったんです。自分たちが進級し役員になったときに、恐怖や暴力を使った指導から、そうではないマネジメントしていこうという形になりました。
そのために、後輩たちにどういう価値を与えていくかという議論に初めてなり、後輩たちにどうなって欲しいかと考えながらマネジメントするべきだという方針が生まれました。彼らにとって本当にためになることをすることが、1番良くてかっこいいと思えました。
例えば、挨拶一つでも、今までのように先輩の外圧でやらせる挨拶よりも、挨拶をする意味を考えさせて後輩が能動的に挨拶出来るようにする。今までの厳しいルールの中で、時代に合わないものは切り捨てながら、意味のあるものは行う意義を再定義しながら、寮生活をマネジメントするためのルールを作っていきました。
この経験によって自分の「他者軸」を形成することが出来たと思っています。寮生活を始める前までは、ある意味自己中心的で、他人のことよりも自分のワクワクすることに対して行動していたいと思っていましたが、寮生活を通して、他人のために考えることを体験をしたことによって、「他者のために行動する」という価値観を得ることが出来ました。
今の「高専生に対するキャリア支援」という他者への視点に大きく繋がっています。
次に、研究室での体験です。ここでの体験は自分の人格を大きく変えてくれました。通常、高専の研究室は5年間ある中で4年生の頃から入ることになっています。
私は新しい技術に触れることが好きで、学外のそういったイベントによく参加していました。授業の実験の中である先生と話していて、「僕、リニアモーターカーの技術とかそういう新しい技術にとてもワクワクするんです」というような話をしたら、その方が超電導(リニアモーターカーなどに使用される技術)の研究をされていたんです。
2年生の時にその先生から「その実験をしないか?」と誘われて、その研究室で実験をさせてもらうことになりました。その研究室に入ったことで、高専の学会発表で1位を取らせてもらうなど大きな成功を経験することができました。
自分の高専入学という意思決定が成功につながったという成功体験が今でも自分の中で強烈に生きています。
「自分はできる!」という強い感情を持ったことで、大学編入→起業という道へ進むための自信を形成することが出来たと思います。また、この研究室で様々なドクターと共に研究する中で、ドクターの持つベクトルと自分の研究に対するベクトルに違いを感じることができました。
そこで、自分の技術を扱うのではなく、どう使うかを考えたいという軸に気づき、大学編入という意思決定をしました。